広告と日常

広告のあれやこれや

【警視庁】そりゃテロは許しちゃいけないよ

CD:気になっていたラーメン屋さんに行ってみたんだけどさ、店内の至る所に「携帯電話は電源オフにしてください!」て注意書きが貼ってあって何か怖かったんだよね。
D:はあ、そういうポリシーなんじゃないすか。
CD:それはそうと、事件っていうのはいつ起こるかわからないよね。
D:何すかいきなり。
CD:一人ひとり常日頃から警戒心を持っておくのは大切だと思うんだ。
D:たしかにそうすね。
CD:でもさ、これはちょっとどうかと思うんだよなあ。

 

D:駅で見たことある気がしますわ。
CD:そう、たしか警視庁のポスターだったかな。
D:なんていうか、警戒すんのが大事なんじゃないすか。
CD:それはあくまで自分の身の回りというか個人的なレベルね。テロなんて社会的な大事件を、一般人が警戒したって限界あるよ。
D:いや国としては当然だけども国民の力も必要ってことですよ。「本人確認にご協力ください」とか「迷わず110番」あるじゃないすか。
CD:このポスターで一番伝えたいメッセージがそれなら、何よりそこを一番際立たせるべきだね。
D:駅で見るポスターなんて一瞬しか目に入らないですからね。
CD:「テロ / ゼロ」みたいな言葉遊びだったり、タレントやアニメを使ったり、なんか余計な印象ばっかり入ってきちゃうよ。
D:普通に言ってもスルーされるから、少しでも見てもらいやすい工夫だと思いますけどね。
CD:まあそうだけど、結局これを見て犯罪組織の人が「やっぱテロやめた方が良いよな……」てなるとも思わないし、一般人が「よし、協力するぞ」てなるとも思わない。大多数の人がこれを見ても何も感じないんだったら、税金の使い方としてどうなんだっていう話にもなるわけさ。
D:。警視庁とか大手広告代理店の偉い人たちがつくってんじゃないすか。知らないすけど。
CD:それにしても、あんまり効果があるとは思えないね。
D:めっちゃ辛辣じゃないすか。あれ、もしかして……
CD:テロリストじゃないからね。
D:何も言ってねえすけど。

【トライ】最上級表現には要注意

CD:僕はいまだにツムツムやってて無課金だからガチ勢ではないにせよ経験に裏打ちされたそれなりの技術と自信とポジティブな気持ちでやってるからツムツムやってること自体を恥じることはないんだけれども、たまに電車で一心不乱にツムツムやってる人を見ると吐き気を催すね。
D:何すかいきなり。いろいろやべー発言混じってますけど。
CD:それはそうと、広告をする上で気を付けないといけない最上級表現てあるじゃない。
D:よくある「No.1」とか「世界初」とかですよね。
CD:そうそう。でもこれって大丈夫なのかな。

 

 

D:「どこよりも質の高い」「どこよりも成績を上げる」……どうなんすかね。普通に広告で使ってるなら良いんじゃないすか。
CD:あまりに堂々と言い切ってるから見過ごされてんのかな。
D:大手だし偉い人たちがつくってるみたいだし、何かしら根拠はあるんでしょうね。
CD:「この薬で治ります」て言っちゃいけない薬機法もあるじゃない。こういうルールがなんであるかというと、傷つく人がいるからだと思うんだ。
D:どういうことすか。
CD:「治ります」て書いてある薬を飲んで治らなかったら困るし、「No.1」ていうから買ったのに古いデータだったとか迷惑じゃん。どこよりも成績上がらなかったら、人生変わっちゃうかもしんないよ。
D:たしかにそうすね。
CD:てかそもそもさ、「どこよりも」ていうけど比べようがなくない?
D:はあ。
CD:トライをやってるやってないで比べることってできないじゃん。1学期は進研ゼミで60点だったのが2学期はトライで80点になった、みたいなイメージだけど、そもそも同じ内容 / 同じ期間で客観的に比較することは不可能でしょ。パラレルワールドですか、て話。
D:よくわかんないすけど、結局何の話すか。
CD:どこよりも成績を上げてほしいなあ、と思って。
D:勉強しろよ。

【RedQueen:NMB48の麻雀てっぺんとったんで!】二番煎じの宿命

CD:好きなものが二番煎じだと知ったときの失望ってあるよね。
D:何の話すか。
CD:聖飢魔IIってめちゃくちゃインパクトあって音楽性もエンタメ性も高いから好きなんだけど、「KISSのパクリ」なんて批判する人もいる。

 

 

D:あー、元ネタあるんすね。
CD:元ネタてきみ……話すと長くなるからスルーしちゃうけど、発言には気を付けたまえ。
D:へい。
CD:クロマニヨンズとかで活躍してるマーシーは知ってるかな。
D:ああー、ブルーハーツとか。
CD:そうそう。ここも詳しい説明は省くけど、彼のトレードマークであるもバンダナも実はローリング・ストーンズキース・リチャーズの影響なんだよね。

 

 

D:へえ、真似してんすね。
CD:真似てきみ……とにかく彼らを悪く言うつもりはまったくないんだ。誰しも憧れてリスペクトして自分に取り入れることはあるからね。でも広告表現として同じ手法を使うと、時にそれはパクリ疑惑となってしまう。
D:まあ、よく言われることではありますけども。
CD:たとえばこれ。

 

youtu.be

 

CD:これは多分、このシリーズのオマージュだろうね。

 

youtu.be

 

D:ああ、そう言われるとたしかに。
CD:これはさすがに二番煎じと言われても仕方ないんじゃないかな。同じベクトルでやっちゃパクリに見えるんだよ。元ネタがカッコいい方向なんだから、チャーミングに愛らしくするぐらい方向性を変えたら良かったのに。
D:担当者に"こんなイメージのカッコいい感じでつくってください"とか言われたのかもしんないすね。
CD:まあ、何か作ったら図らずも何かに似てしまった、てのは実際あるんだけどね。だからこそ、日々いろんな広告表現や先人の作品を研究することで先人への敬意を払いつつ、自分のオリジナリティを磨いていく必要があると思うんだな僕は。
D:珍しく熱いすね。
CD:"そのセリフ、誰の二番煎じなんですか"って言いたいんだろ。うるさいよ!
D:なんも言ってねえすけど。

 

【はま寿司 / アサヒビール / コカ・コーラ】企業の名前を動詞に使っても流行るかしら

CD:ゼルダだと思ってた人がリンクだったのはまだ許せたけど、バカボンだと思ってた人がバカボンのパパだったのはいまだに許せないんだよなあ。
D:何の話すか。
CD:それはそうと最近、企業や商品のブランド名を動詞にする手法が目立ってきたよね。
D:どういうことすか。
CD:たとえば、これとか。

 

 

D:ああ、はま寿司っすね。
CD:ほかにも、これとか。

 

 

D:ああ、アサヒビールのザ・レモンクラフトっすね。
CD:ブランドや商品を新しい動詞として提案することで、ブームをつくりだそうとしてるんじゃないかな。
D:たしかに定着したら印象強くなりそう。
CD:でもまあ、それを企業側からアピールしてもダメだよね。いち消費者がわざわざ企業の名前を使ってまで広めたいとは思わないでしょ。
D:そういう意味で「ググる」はネット発だから定着した感ありますね。
CD:そうそう。あと極めつけがこれなんだけどさ。

 

youtu.be

 

D:あー。
CD:「コカ・コーラました」てさすがにムリあるでしょ。コカ・コーラを飲みましたの略?それともコカ・コーラをしましたっていうもっと大きな動詞としての表現?いやいやそれはいくらなんでも
D:NewJeansのコラボ曲「コカ・コーラマシッタ」ですね。
CD:へ……?
D:もともと韓国の「どれにしようかな」ていうフレーズが「コカ・コーラマシッタ」とも言われているらしいんですよ。日本でもありますよね、「天の神様の言う通り」みたいな。それが「コカ・コーラ美味しい」とかって意味にもなってるらしく、やっぱコーラのメインターゲットである中高生に人気の韓国アーティストを起用しているだけあって
CD:いろいろよくわかんないな!
D:ちゃんと調べてくださいよ。

 

【サイボウズ】がんばりたい人もいるわけで

CD:アイデア出しの前の一言ってさ、会社の規模によって違うんだよね。
D:なんすかいきなり。
CD:ニュアンスはあれだけど、小さい制作会社の人はたいてい「まだ全然詰めれてないんですけど……」「しょうもないアイデアと思われるかもしれませんが……」て最初に言う人が多い気がする。
D:謙遜してんじゃないすか。ちょうどいい枕詞というか雰囲気づくりというか。
CD:でも、大手代理店になると「御社にとって最善策を考え抜いてまいりました」「世界に一大ムーブメントを巻き起こす」みたいにデカいこという人が多い気がする。
D:プレゼンの演出なんすかね。
CD:こういっちゃあれだけど、まだ無名の会社はアイデアやクリエイティブに自信のない人が多かったなあ。大手がみんな自信満々なわけでもないだろうけど、少なくともネガティブな前置きをする人はいなかったな。
D:つか完全に主観というか人それぞれでしょうけど。
CD:うん、まあ決め付けは良くないね。てことで見てこれ。
D:出た。

 

 

D:がんばらなくていいじゃん、てシンプルなメッセージじゃないすか。
CD:そうだね、それ自体は別に良いけど「ニッポン」でくくらなくても良くない!?
D:時代とか社会情勢的なことを考えてのニッポンてことすよね。
CD:こんな時だからこそ、がんばろうとしてる人もいるわけだよ。それをあえてたしなめちゃあ、いかんと思うんだね。僕とか天邪鬼の人は、がんばるなって言われたら素直に「がんばっちゃうぞー」て思うけどね。
D:いや、そういった反論のための「無理して出社させない選択肢を」ていう押さえの言葉もあるわけで。
CD:となると、そもそも出社してる人にしか響かないコピーになっちゃうわけだ。
D:別にいいじゃないすか、メインターゲットってことで。最初から別にあなたに言ってないすから。
CD:それもそうか。じゃあ、どのみちがんばらなくていいよね。
D:いつもヒマっすもんね。

【Dior / 栄光ゼミナール / 東京個別指導学院】広告の内容はブランドとしてのメッセージ

CD:最近、モヤっとする広告が多くてさ。
D:なんすかいきなり。
CD:まずこれ。

 

youtu.be

 

D:恋に生きる女性を応援、みたいなことすかね。
CD:いやそれにしてもよ、結婚式をぶち壊してそのまま違う男とイチャつきにいくって、相当お転婆な女性像じゃない!?
D:自分らしさを大切に的なメッセージなんじゃないすか。
CD:強烈だけどストーリーを考えたらモヤっとするんだよねえ。
D:てか前回のランドセルに続いて香水のCMまで観てんすね。
CD:ヒマだからさ。
D:ヒマなのかよ。
CD:続いてこれ。

 

 

D:受験を乗り切った先の感動を想起させてんじゃないすか。知らんけど。
CD:それはそうかもしんないけどさ、泣こうが笑おうが自由じゃない!?生徒というか受験を乗り越えて成長した姿を描くべきなのに、泣こうてアクションを強制すんじゃないよ。
D:いや、シンプルに泣くほど大変だから一緒にがんばろう的な?
CD:わかるよ。でも「受験は大変」→「この塾でがんばる」→「合格して泣こう」ていうメッセージなら、そもそも「受験は大変」と思わせることが害悪とすら思うね。
D:どういうことすか。
CD:受験勉強がツラいと思ってしまう、日本の社会システム引いては資本主義的な。
D:いやよくわかんないんでもういいす。
CD:まだあるのよ。モヤっとしたやつさ。
D:あんのかよ。
CD:同じく受験関連だけど、これ。

 

 

D:その塾の先生と生徒の関係性みたいなものがわかるじゃないすか。
CD:わかるけどさ。わかるけどもさ。言わされてる感がすごくない!?「合格発表の直後にしたことは何ですか?」「この喜びを誰に伝えたいですか?」ていう質問をされない限り、このセリフは出てこないでしょうよ。
D:広告なんて大体そんなもんでしょ。
CD:大学の掲示板を見に行った帰りなのかなあ、こんなウッキウッキでね。白々しい。そもそも合格発表の季節にしては薄着だな!青春かよ!
D:うるせえっすねえ。最後関係ないじゃないすか。
CD:あー、青春したいなあ。塾行こうかな。
D:勝手にしろよ。

【メルコイン / ヴィトン / URBAN HACKS / セブン&アイ】人間の仕組みを広告に利用してみたら

 

CD:「人がつい見てしまう仕組み」を広告に利用することがあるよね。
D:なんすかいきなり。
CD:たとえばこれ。

 

 

D:たしかに何となく読めておもしろいっすね。
CD:続いてもう一つ、こんなのも知ってるかい。

 

 

D:あー、これはつい手に取っちゃうのもわかるなあ。
CD:そうそう。つい見てしまうっていうのは仕方ないとしてさ、どう思った?
D:どうっていわれても。
CD:僕は「なんだよこれ!」てちょっとネガティブな気分になったよ。人がつい見てしまう仕掛けだから、つい見ちゃったわけだね。でもその結果、自分にとっては全然いらない情報だったな!という、いわゆる「見て損した気分」だよ。
D:はあ、人それぞれだと思いますけど。
CD:そうだけどさ、「くうぅ、やられたー!あっぱれ!買ってみよう!」となる人は少ないんじゃないかな。
D:いや、いきなりそこは狙ってなくて、いわゆる記憶に残すことを重視してるっていうか。
CD:たしかにね。でも不快感とともに思い出すと、企業やブランドにとってはマイナスなんじゃないかと思うわけ。
D:うーん、よくわかんないすけど。
CD:一方でさ、これも見てくんないかな。

 

 

D:いや全然わかんないすよ。プログラマー呼んでできましょうか。
CD:まあまあ、よく見てみな。
D:……あ!
CD:そうなんだよ。よく見たらただのローマ字でさ、URBAN HACKSという会社の採用広告になってるわけ。
D:へー、おもしろいですね。こんなのと似てるかも

 

 

CD:そうそう。どちらも多くの人が「自分には関係ない、わからないと思って読み飛ばす」ものだけど、よく見たら理解できるというか。
D:なんかちょっとユニークで印象に残りますね。
CD:そうなんだよ。こっちは最初に紹介した2つの「つい見てしまうけど、ネガティブな印象が残るもの」とは真逆で「ついスルーしがちだけど、よく見たらポジティブな印象が残るもの」ていえるんじゃないかな。
D:たしかに。不思議。
CD:どこまでいっても人間は動物なわけさ。だからこそ人間の仕組みというか自然な行動を、うまく表現技法として取り込めると良いね。
D:はあ。
CD:何にしても、メッセージというか広告の内容の方が一番大切だというのは前提だけどね。
D:お、締めが決まりましたね。さすが人間。
CD:くくり方がでかいな。